子供時代のおわり

大好きだった先輩が、私が知らない間に海外に行っていたことを知った。

高校生の時同じ部活で、好きになった先輩だった。

私なんかよりも色々なことを知っているところが魅力的で、話すことが面白くて、もっとこの人のことを知りたいと思っていたら好きになっていた。勇気を出して告白をした結果、あっさり振られたけど、それから社会人になっても細々と仲良くしてもらっていた。

時折思い出したようにくるLINE、「元気?」「飲み行かないかな」…あの頃大好きだった人と、大人になってからも会える嬉しさはひとしおで、いつも私は舞い上がっていた。カウンターで、彼がクラフトビールを飲んで、少食だから全然食べないつまみを私が代わりに食べざるを得なくて、仕事の話をしたり、恋愛の話をしたり、本当に他愛もなかったけど楽しい時間だった。

よく彼は「俺のことを一番わかってくれるのはお前だよ」と言ってくれていたし、私も「あなたのことをこんなに好きなの多分私が一番だよ」って言ってたけど、多分お互い相手を喜ばせたくて、自分が満足したくて言ってただけだったね。でも、酒の席の戯言ではあったけど、少なくともそれを言葉にできるだけでも十分だった。

あなたと一緒にいるとき、私は高校生の頃のままだったし、あなたもあの頃を引きずったまま、”私の片思いの相手”でいてくれた。

ある時、仕事の都合で海外にいくことができるから、ゆくゆくはそれを望んでいると話してくれた。「お前も一緒に行く?」って言ってくれた。嘘だってわかってたけど、嬉しかった。

ある日、ついに歯車がうまくいかなくなって「お前は結局相手がいるもんな」と言い捨てられてしまった。私が悪かったのかもしれない。出会ってから10年経っていた。今更全部嘘以外にあり得ないって思ってた。色んな都合のいい言葉は大人になって使えるようになったその場のやさしさだと思ってた。だけど、どうやら、あのやわらかい精神のまま私と彼の関係は止まっていて、外側だけがうまく育ってしまっただけだった。

 

そうやって、連絡を取らなくなって1年半が過ぎたこの前、風のうわさで彼が仕事の都合をつけて海外に行ったことを知った。

「お前も一緒に行くか」と言ってくれた場所に、ついに行ったらしい。

 

私は少ししたら30歳になります。

なんか、彼の知らせを受けて、ついに色んなことが終わってしまって、私達は大人になって、子供時代はおわってしまったんだと知りました。

29歳のうちに切りよく終わってよかった気がします。

 

先輩が孤独じゃありませんように。夢を叶えたこと、私も嬉しかった。