絵を描いて、納得いくものをこの世に存在させて、ようやく私の存在価値が生まれる。
全然うまくないし、売れるようなものではないけど、私が私を存在してていいと思える瞬間。
何をしてもうまくいかない。誰かに妬まれるものはもっていない。一つも納得するものは手の中にない。
そうやって29年間生きてきた結果の今がある。
もちろん、誰もが特別な何者かになれるわけではないことも知っていて、ありふれた一人でもその存在の尊さがあることもわかっている。だけど、そういうことじゃなくて、自分がそうありたいと思ったものは何も手にできていないことの虚しさがある。
その虚しさを唯一埋めるものが、私にとっては絵なのです。
小学校の時、いろんな人とは仲良くできなくて、自分が集団の中で思うようにはいられないとわかり始めたころ、お話を描き始めたらクラスの皆が話しかけてくれるようになった。
あの時から、自分に欠けたものを自分の力で埋められる唯一の手段が絵を描くことだった。恋愛をしたって、薄い膜が空いた穴の表面に張られるだけで、埋まることなんかない。結局、自分の欠損は自分の細胞でしか修復できない。
毎日自分の存在価値を生み出せるほど私は真面目、ストイックじゃないから、改めて嫌になる。でも、1週間に1回でも、自分のことをやっているなって思える瞬間があるだけで、生きることが楽になっている。